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8 さらば、金本。 巨人の松井が圧倒的な成績でチームを日本一に導き、 晴れてメジャーリーグへ旅立とうとしている陰で、 カープの4番打者・金本がFAで阪神に移籍した。 これを是か非か、どっちかと言うと金本を責めるのか、 それとも球団側を責めるのか、それともどっちもなのか、 仕方がないのか等々、カープファンの中でもいろんな意見 があるようだ。 「出てって正解」そういう意見に理がある部分もあると は思う。 確かに今シーズンの金本はよくなかった。調子や数字そ のものもそうだったけど、何を見て、考えて、プレーして るのかわからない、そんな場面がいくつか聞かれた。球場 で見た姿も、かなり元気なさそうだった。 「気持ちがそこになかった」そう取られても仕方のない ような有り様だったり、チームの4番としては、モチベー ションを下げ、ファンを萎えさせてしまうような不用意な 発言もいくつかあった(取り上げ方・あおり方にどうこう あったとしてもそれはそれとして)。 「ただ」なのか「また」なのか難しいところだが、 完全に裏目と出た「不調であろうと具合が悪かろうと 金本は140試合、4番」というのもあった。 浩二は賭けに敗れ、4番金本と共にカープはずぶずぶと、 「阪神を下回る」5位に沈んだ。 確かに監督・ベンチ・フロントと、全般に渡る 「ヘボさ、タコさ」「ことごとく裏食った」「運も逃げ出す 冴えない采配」もあったさ。 10勝級投手を4人持ち(しかも小さい故障はあったと は言え、4人ともほぼフルシーズン働いたのだが)、 懸案のストッパーも定着し(津田を上回る30セーブぐら いは挙げた。しかもシーズン終盤まで無敗で)、 打者は故障していた「3人の勇者」が戻り(衰えか、贔屓 目に見ても気合が空回りした感もある野村はともかく、緒 方と前田はクリーンアップにほぼ定着し、規定打席に達し て3割打っている)、過剰といわれるほどの戦力だった。 (←「過剰」と「偏り」こそが、チームの戦いを崩壊させ ることになったとも言えるのだが)それが5位だもの。 「何があっても4番金本」 これは「まかせたぞ」「意気に感じろ」「立てている」 そういう感じもあったとも思うけど、何か、ある時期から はもう「さらし者」って感じも否定できないものはあった。 そして4番に固定されながらも、話題をひくのは前田の 復活ストーリーだし、頼りにされテコ入れしたい打順に置 かれるのは緒方であり、闘志の象徴、チームの精神的支柱 は野村謙二郎、これは変わらなかった。この3人も大好き だが、彼らを怪我で欠いている間、ロペスと共に弱小戦力 を盛り立てるべく奮闘した金本としては、「あ、もう俺は いいか」になったとしてもそりゃわかるわな。 とは言ってももしか市民球場のレフトで阪神の金本を 見たら、「出がらしーー!!」とヤジってやりたい気持ち でもあるけど(実際はやらんと思う)。 うん、でも、いろいろ言ってるけど、とても好きな選手 ではあった。体の割にハートは強くないし、口軽いし、守 備ヘタだし、天才じゃないし、努力の方向も必ずしも合っ てなかったけど、でも、ある意味一番愛されていた選手だ ったんじゃないかな。 金本よ、「もうこりごり」の4番からは解放された。 「どんなに頑張っても4番めの選手」から、 「救世主となるかもしれない強力な新戦力」として、 迎えられることにもなった。 自分のために選んだのだ。自分のために、しっかり戦う がよい。甲子園のファンに、ヤジられ、ドヤされようとい いじゃないか。自分のためにプレーしろ。いい成績残せ。 巨人戦で打ちまくれ。出がらしなんて言わすなよ。 但し、あくまで自分のため、 間違っても「阪神を優勝させる」なんて妄想描くなよ。 そしてカープよ。心ここにあらずとも1年間4番を張り 続け、下位に沈めた罪を引っ提げ(結果を置き土産にし)、 あばよと去った金本に応えてやろうぜ。 金本の目の前で、カープの優勝決めたれ。 胴上げ見せたれ。きっちり阪神戦で決まるようにだ。 礼を尽くしてあげてくれ。 そうしたっけ、金本的にも「このチームにかつて自分が いたんだ」ってことも肯定できるし、「やっぱこいつらに はかなわなかった。だから出ていったのも正解」と肯定で きるだろう。 人の勇者には、特にその責任は感じてほしいな。 (しなやかしなちゃん ファンとして 気持ちの整理 はすぐつくも のではないけ れど、 「カープが弱 かった時代の 4番打者」と して、 金本は記憶に 残る伝説の存 在となった。 と言ってお こう。